楽しく続けられる健康サポートアプリ
「Personal Aile」で生涯現役を目指す(後編)
株式会社湘南交欒
マゼラン湘南佐島総支配人
稲葉淳 氏
株式会社SOYOKAZE
未来ビジネス開発部 兼 wellbista事業部 部長
白木優史 氏
全国で高齢者介護事業を展開する株式会社SOYOKAZE※1は、既存の介護サービスの枠にとらわれず自分らしく生きていくための健康型有料老人ホーム「マゼラン 湘南佐島」を神奈川県横須賀市で運営している。
同施設は『健康な人をより健康に』をコンセプトに、入居者の健康管理サポートとしてApple Watchを導入する国内初の取り組みを実施したことでも注目を集めている。本事業の責任者である白木優史氏と同施設の総支配人 稲葉淳氏にウェアラブルを活用した健康促進サービス開発の経緯と、「Personal Aile」の導入によって生じた入居者の生活の変化について話を伺った。
1. 2023年4月3日に株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティから社名変更。

着けて暮らすことが健康の好循環につながる

――ヘルスケアデータを基にした健康管理サポートの内容について詳しく教えてください。
稲葉:健康管理サポートについては、Apple Watchで把握したヘルスケアデータを基にして「運動・食事・社会参加」という3要素から医師が定期的に評価とアドバイスを行っています。そして、そのアドバイスに沿って健康維持や生活習慣を改善するためのアクティビティを実践してもらうサイクルを回しています。
――医師のアドバイスは具体的にどのように伝えられるのでしょうか。
稲葉:月に一度、提携する医師と個別面談を実施し、そこで「もう少しお肉を食べましょう」「坂を登ってみましょう」といった具体的なアドバイスをいただきます。この内容はiPhoneの「Personal Aile」アプリの画面でも確認できます。
その後、施設側でも一人ひとりに合わせた健康アドバイスシートを作成してお渡ししています。ここには先月の結果と今月の目標、レストランスタッフやフィットネスインストラクターからのコメントも添えてあります。ポイントとなるのは、やはり継続的にデータを蓄積するほどに、アクティビティとヘルスケアの数値と健康状態の相関関係が特定しやすくなることです。そして、以前のデータはどうだったのかについて、施設側も入居しているお客様も同じように簡単に振り返れるのがアプリの優れた点だと考えます。

健康データの収集から医師のアドバイス、生活改善につなげるアクティビティのサイクルをPersonal Aileが支援する。

――健康を増進するためのアクティビティにはどのようなものがあるのでしょう。
稲葉:例えば、「食」をテーマにしたアクティビティでは、料理教室や湘南の朝市に訪問するといったイベントがあります。「運動」についても多彩なプログラムを用意しており、ラジオ体操や海岸でのウォーキング、ヨガなどから選ぶことができます。また「社会参加」については、館内でのワークショップや就労イベントなどを通じて近隣の方々との交流を深める場を提供しています。
――なるほど。コミュニケーションを促すことで健康への意識をさらに高める効果があるのですね。
白木:一般的に、健康診断などで医師からメタボを指摘されても、一人で食事制限や運動を続けることはなかなか難しいものです。その点「Personal Aile」はよくできていて、これらのアクティビティや毎日の運動に対して独自のポイントを貯められる仕組みがあり、これがお客様のアクティビティへの参加意欲を高めています。
稲葉:例えば、ラジオ体操や海岸までのウォーキングイベントへの参加で50ポイントが獲得できるように設定しており、お客様からもこのポイントシステムは大変好評です。獲得したポイントは施設内のレストランやカフェなどでご利用いただけるので、訪れたご家族にポイントで料理を振る舞うこともできます。「私すごい所に住んでいるでしょ!」とご家族に嬉しそうに話されているお客様の姿を何度も目にしています。

Personal Aileに蓄積された健康データで未病の改善を目指す

――SOYOKAZEさま、マゼラン湘南佐島さまとして今後の展望などをお聞かせください。
白木:最初に想像していた以上にApple Watchを用いた健康促進に抵抗がない方が多いという実感があります。高齢者とその家族をサポートするための介護保険法が施行されたのは2000年のことで、提供するサービスの内容は大きく変わっていません。しかし、現在60歳以上の高齢者の方は高度成長時代を生き抜かれた方たちですから、新しく良いものを生活に取り入れていきたいと考えるのは自然なことと言えます。そして、これは次の高齢者世代となる私たちにとっても決して人ごとではありません。
稲葉:すでに連続的な健康データを用いて、改善に向けた取り組みが行えるようになりました。今後はこれをさらに進め、入居したお客様一人ひとりの得意分野を伸ばせるアクティビティプログラムを充実し、心身の状態が徐々に弱ってしまう「フレイル※2」をいかに未然に防ぐかが課題となっていくと考えています。
白木:Apple WatchとPersonal Aileの導入は、もともと神奈川県の「未病産業研究会」との協議から発展したもので、マゼラン湘南佐島は複数の企業の参画も含めた健康寿命延伸のための実証の場所として活用していきたいと思っています。
今後は他社の高齢者介護施設でも同様の取り組みは増えていくでしょうが、デバイスは導入できてもシステム全体を統合して活用していくためのノウハウは異なります。この点において、企業の健康経営をサポートするサービスなどの実績が豊富なアツラエさまのバックアップがあることは大変心強いと感じています。
2. Frailtyの日本語訳

在宅系のデイサービス、ショートステイから入居系のグループホーム、有料老人ホームまで、お客様一人ひとりの身体状況や生活スタイルに合わせた幅広い介護サービスを「そよ風」ブランドで全国に展開。
既存の介護事業からニーズの高いサービスを抽出し、付加価値の高いサービスや新たなサービスを提供しています。介護事業を通じて培ってきた知見を活かし、シニア領域に限らないさまざまなサービスの創出にも取り組んでいます。