#02

楽しく続けられる健康サポートアプリ
「Personal Aile」で生涯現役を目指す(前編)

株式会社湘南交欒

マゼラン湘南佐島総支配人

稲葉淳 氏

株式会社SOYOKAZE

未来ビジネス開発部 兼 wellbista事業部 部長

白木優史 氏

全国で高齢者介護事業を展開する株式会社SOYOKAZE※1は、既存の介護サービスの枠にとらわれず自分らしく生きていくための健康型有料老人ホーム「マゼラン 湘南佐島」を神奈川県横須賀市で運営している。

同施設は『健康な人をより健康に』をコンセプトに、入居者の健康管理サポートとしてApple Watchを導入する国内初の取り組みを実施したことでも注目を集めている。本事業の責任者である白木優史氏と同施設の総支配人 稲葉淳氏にウェアラブルを活用した健康促進サービス開発の経緯と、「Personal Aile」の導入によって生じた入居者の生活の変化について話を伺った。
1. 2023年4月3日に株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティから社名変更。

SOYOKAZEと湘南交欒が共同運営する健康型有料老人ホーム「マゼラン湘南佐島」は、相模湾を見晴らすロケーションが魅力。

ヘルスケアデータを“点”ではなく“線”で記録する

株式会社SOYOKAZE 未来ビジネス開発部 兼 wellbista事業部 部長 白木優史氏

――「マゼラン 湘南佐島」のコンセプトについて教えてください。

白木:少子高齢化が進む日本では、平均寿命が延びる一方で健康な状態で生活できる「健康寿命」との間に約10年程度の差があるとされています※2。このギャップを埋めて健康寿命をいかに延ばすかという社会課題が開発の背景にあり、弊社では未来を見据え、暮らすことで心身ともに健康促進に役立つ施設を目指し、マゼラン湘南佐島を2021年に開設しました。そこからモニター入居期間を経て、2022年12月より本入居を開始しています。
2. 厚生労働省 健康寿命の令和元年値について. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000872952.pdf

――健康促進に役立つサービスにApple Watchを導入した理由は何でしょうか?

白木:健康を保つには、年に一度の健康診断や人間ドックだけでは不十分だと考えています。日常生活における潜在的な問題を発見するには、Apple Watchの装着によるヘルスケアデータの収集と分析が欠かせません。一般的にApple Watchは医療機器ではないとされていますが※3、毎日の心電図や心拍数、血中酸素濃度や運動量などのヘルスケアデータを比較的高い精度でまとめて記録できることが大きなメリットです。
3. Apple Watch搭載の「心電図」アプリについては2020年9月に厚生労働省が医療機器として認定した。

――データの測定について医療機器と比べても利点を感じられたのでしょうか。

白木:専用の医療機器であれば、その時点での健康データは正確に測れるでしょう。しかし、健康の維持や促進という観点からは、普段の健康状態を継続的に記録し続けることが重要で、何かの変化の兆しがあった際にデータを振り返って改善点を見つけることもできるのです。いわば、健康データを「点」ではなく「線」として継続的に取れることがApple Watch導入を決めた一番の理由と言えるでしょう。

株式会社湘南交欒 マゼラン湘南佐島 総支配人 稲葉淳氏

――入居者の方は健康促進に関するコンセプトに同意されて装着しているのですね。

稲葉:入居ご希望のお客様には、一般的な老人ホームとはコンセプトが異なり、今後も健康でいたい人をお手伝いできる施設であることを最初にご説明させていただいております。例えば、最近入居されたお客様ですと、私どもと50回ほどやり取りを重ね、ご自分でしっかりと考えてから決められたということがございました。私たちの提案する価値に納得し、「終の住処」として選ばれる方はもともと健康寿命に対する意識が高く、Apple Watchの装着についても納得される方が多いです。

――高齢の方ですとデジタルデバイスに慣れていないイメージがあるのですが、このあたりの対応はいかがでしょう。

稲葉:入居して最初の1週間は施設の生活に慣れるためのプログラムを組んでいて、そこでApple Watchの使い方についてもしっかりと説明しています。この際に、Apple Watchを装着し続けることがマゼラン湘南佐島でお過ごしいただくにあたっての価値であり、装着しないとその魅力が半減してしまうことについてもお伝えしております。 また、入居したお客様の目線に合わせるために、施設スタッフにもApple Watchを貸与し、トラブルの際に対応できるサポートスタッフもサロンに配置しています。とはいえ、Apple Watchと健康管理アプリの「Personal Aile」のユーザーインターフェースが優れているため、操作方法がわからないといった相談はほとんどなかったと認識しております。 Watchの装着についても納得される方が多いです。

マゼラン湘南佐島では入居者の健康管理のためにApple Watchを導入し、実証に必要なアプリ「Personal Aile」の開発をアツラエが担当した。
これまでApple Watchのようなデバイスは利用したことがなかったという。

――入居者のみなさまの感想や導入の成果についてもお聞かせください。

稲葉:こちらに入居されて1年半ほどになる92歳の女性のお客様からお話を伺いましょう。普段からApple Watchを健康管理に役立てていただいています。

――よろしくお願いいたします。マゼラン湘南佐島での暮らしはいかがでしょうか?

入居者:家族に勧められてこちら(マゼラン湘南佐島)に入りました。最初は交友関係が変わってしまい寂しさもありましたが、今は楽しく過ごしています。いつでも部屋から海が見えるので、最高のロケーションだと感じています。

ラジオ体操や散歩をすることでポイントが貯まり、「遊びに来た甥や姪にカフェでご馳走を振る舞っている」と入居者は話す。

――普段はApple Watchをどのようにお使いになっていますか。

入居者:時計として使うことはもちろん、朝起きてすぐに心電図を取るようにしています。睡眠についても記録されているので、こちらも時々確認しています。最初はスタッフに使い方を聞きに行くこともありましたが、今は特に困ったことはありません。充電が必要であればApple Watchが教えてくれますし、1日のスケジュールについても大体こちらで確認できます。

――健康に良い変化を感じたことはありますか。

入居者:ここに住んでいると、みなさんとラジオ体操などの運動を一緒にする機会が増えるのが良いですね。以前は登りきれなかった階段も、今では最後まで登れるようになりました。食生活もバランスが良くなったので、以前と比べて飲んでいたお薬の量が減り、お医者さまにも健康になってきていると褒められました。

#02
株式会社SOYOKAZE

在宅系のデイサービス、ショートステイから入居系のグループホーム、有料老人ホームまで、お客様一人ひとりの身体状況や生活スタイルに合わせた幅広い介護サービスを「そよ風」ブランドで全国に展開。
既存の介護事業からニーズの高いサービスを抽出し、付加価値の高いサービスや新たなサービスを提供しています。介護事業を通じて培ってきた知見を活かし、シニア領域に限らないさまざまなサービスの創出にも取り組んでいます。